カイラとヒマワリの種

夏休みが始まったばかりのある日、カイラの家に郵便が届きました。

「わっ! アキからだ~」

それは、同じ事務所で仲良しのアキから送られたものでした。

カイラは、さっそく封を開けてみます。

すると中には、アキが書いた手紙と、ジップロックで密封したヒマワリの種が入っていました。

「あっ、ヒマワリの種! 私の大好物だ~」

食いしん坊である上、読書や細かい文字を読むのが苦手なカイラは、添えられた手紙には目もくれず、あっという間にヒマワリの種を食べてしまいました。

≪もぐもぐもぐ≫

それから。

カイラは、オーデ合格者への賞品として端末のみをもらって以来、つい最近契約したばかりのワイモバのスマホを取り出すと、アキに電話しました。

電話はすぐにアキにつながりました。

「もしもし、アキ? ありがと~。ヒマワリの種、すっごくおいしかったよ」

しかし。

アキの反応は、カイラにとって、ものすごく意外なものでした。

「カイラったら、ひどいわ! せっかく送った種を食べちゃうなんて!! あたしはカイラに、ヒマワリのお花が咲いたところを見てほしかったのに」

続けて。

「だからね、ちゃんと『この種は食用ではありません。土にまいて、お水をあげて、お花が咲くまでしっかり育ててね』ってお手紙も、いっしょに入れておいたのに」

さあ大変。

お礼の気持ちを伝えたかったのに、アキは電話口で泣き出してしまいました。

「カイラのバカ! もう知らない! え~ん、え~ん(涙)」

もちろんこれは、アキお得意のウソ泣きなのですが、純粋で素直なカイラはすっかり信じ込んでしまって大慌て。

(あゎゎ、どうしようどうしよう)

「アキ、ちょ・・・ちょっと待っててね」

そう言うと、ゴミ箱から、さきほどジップロックの空袋と一緒に捨てた、アキからの手紙を探し出すと、いっしょうけんめい最初から読んでみました。

するとそこには、アキの女の子らしい几帳面な文字で、種のまき方から、水のやり方、肥料のやり方まで、イラスト入りでヒマワリの育て方が詳しく書いてあったのです。

(お手紙をちゃんと読まなかった、私がいけなかったんだ・・・)

カイラは、心の底から反省し、必死でアキに謝りました。

「アキ、ごめん。ごめんね~」

・・・

・・・

・・・

それから数日後。

カイラの家に、再び郵便が届きました。

そうです。

アキは、もう一度ヒマワリの種を送ってくれたのです。

カイラは、食べたいのを我慢し、今度こそ手紙に書かれた指示通りに種をまいて、水をやりました。肥料も与えました。

この夏休み、毎日毎日、欠かさず世話を続けました。

・・・

・・・

・・・

そして、夏休みも終わりに近づいた日の朝。

カイラは、種をまいたプランターに、小さな小さな緑色の芽が出ているのを見つけました。

「そうだ! アキに知らせなくちゃ」

この喜びをいっしょに分かち合うため、カイラは、自分からアキに手紙を書くことを思いつきました。

そこで、オーデ同期で文通が趣味のアリサからもらったものの、使うことなく机の引き出しの奥にしまい込んだままになっていたレターセットを取り出すと、考え考え書き始めます。

『アキへ』

普段は勉強など一切しないカイラですが、この日だけは机に向かって、夜遅くまでがんばりました。

そして、ようやう1日がかりで完成したアキへのメッセージは、カイラが生まれて初めて書いた手紙となったのです。

《おわり》

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