ニコラ9月号「姉モ&妹モコーデ」の撮影が終った後。
マノカは、自身のコーデを担当してもらった先輩ニコモ、ヒビキから誘われた。
「マノカちゃん、これから暇?」
「え…。あ、はい」
「じゃあ、2人で一緒にカラオケでも行こっか」
「はい☆」
ヒビキといえば、ニコラへの愛情はもちろん、ニコモで1番読者想いなことでも有名。後輩のニコモからも慕われ、なにより学校の勉強もできる優等生として知られている。
新年の抱負として「優等生キャラを目指す!」と宣言したマノカにとって、まさに理想であり憧れの存在。大好きな先輩なのである。
そんな先輩から誘われたことが、うれしくてたまらないマノカであった。
こうして、撮影が終わると他のニコモとの別れの挨拶もそこそこに、2人はニコラ編集部の入る新潮社本社ビルから程近い、JOYSOUND 神楽坂店にやってきた―――
「終了時間のご連絡はありません、それではごゆっくりどうぞ」
個室に入り、2人っきりになったところで、さっそくヒビキが切り出す。
「わぁ~。マノカちゃんのほっぺたって、なんでこんなにやわらかいの~?」
そう言いいながら、ヒビキ。
おもむろに、マノカの頬に手を伸ばし、優しく優しくなでまわす。
そんな先輩の行為にマノカ、ちょっと引きつつ、困った様子で。
「あ・・・あの。そうだ。私、飲み物注文してもいいですか?」
ヒビキの手を振り払うように立ち上がると、注文用の受話器を手に取る。
するとヒビキ。
座ったままマノカを見上げて、いつもとは違った声色で。
「ええ、いいわよ。マノカちゃん、なんでも注文なさい。もちろん、お姉さんの、おごりよ」
ニコラ誌面でおなじみ、パッと輝くような笑顔で言う。
「あ、はい。え~っと、じゃ、私、タピオカミルクティーを…」
と、マノカが言いかけたところで、それをさえぎるように。
「もちろん、私の手作りのチョコレートクッキーも、食べるわよね?」
「へっ!?」
思いがけない申し出に、おどろくマノカ。
「うん、あのね。私、マノカちゃんのために、焼いてきたのよ」
ここでヒビキ。
ゴソゴソと、自慢のピンクのLSBのバッグを開けると、手作りらしきクッキーの入った、大きな水色のタッパーを取り出し、ドカンとテーブルに置く。
「あ、あの~。私、あんまりチョコレートは…」(っていうか、ここ持ち込み禁止じゃ?)
小声でマノカ。
実は、甘いものがニガテなのである。
しかし、そんなマノカに対し、普段の撮影のときは見せたことのないような押しの強さでヒビキ。
「た・べ・る・わ・よ・ね?」
「は・・・はい」
ヒビキの剣幕に若干おびえつつ、仕方ないので、うつむいたまま小さく返事をする。
「それじゃあ、マノカちゃん。私に『食べさせてください』 ってお願いしてみて。そしたら、お姉さんが食べさせてあ・げ・る」
これにマノカ、一瞬ためらうものの、やがて意を決して。
「た・・・食べさせてください」
しかし、マノカの口から出た声は、それはそれは小さなものだった。
もちろん、ヒビキは不満である。
「なぁに? 聞こえない」
ヒビキ、大げさに、手を耳に当てて、うながす。
「食べさせてください!」
こんどは、しっかり大きな声が出た。
ようやく満足そうに微笑むヒビキ。
「ふふふ。いいコね。それじゃあ、約束どおり、お姉さんが食べさせてあげる。でも、その代わり、全部食べ終わるまで、帰さないから。いい?」
続けて。
「もし残したりなんかしたら、おしおきよ」
そう言うと、ヒビキ。
タッパーから、クッキーを1つつまんで取り出すと、ゆっくりとマノカの口の前に差し出す。
「はい。あ~ん」
もう、こうなっては食べるしか道のないマノカ。
仕方なく、チャームポイントでもある小さな口を、小さく小さく開いて待つ。
「もっと大きく」
すぐに、ヒビキから鋭い叱責が飛ぶ。
これに、マノカ。
「ぁ~」
やや大きく開くも。
「ほら、もっと!」
「あ~」
「もっともっと!!!」
「あ゛~」
≪パクッ≫
「どう? おいしい?」
「≪もぐもぐ≫ お・・・・おいひぃです ≪もぐもぐ≫ 」
「そう、よかった。うれしいわ。うふふ」
「≪もぐもぐ≫ 」
こうして、タッパー1箱分のクッキーを食べ切るマノカの姿を、幸せそうに見つめ続けるヒビキ先輩であった。
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